禅の視点 - life -

禅語の意味、経典の現代語訳、仏教や曹洞宗、葬儀や坐禅などの解説

禅僧の逸話・エピソード

【山岡鉄舟】 - 禅における罰当たり - 禅僧の逸話 

山岡鉄舟(やまおか・てっしゅう)といえば幕末を生きた剣術の達人であり、政治家としても手腕を振るった人物として知られているが、個人的な印象としては「禅者」という言葉がぴったりだと感じられる。 鉄舟という名前は本名ではなく居士号だが、そこに一抹…

【風外本高】紅葉の名所、足助の香嵐渓で暮らした禅僧

江戸時代後期の曹洞宗の僧侶に風外本高(ふうがい・ほんこう)がいる。 紅葉で有名な愛知県の足助の香嵐渓(こうらんけい)にある香積寺の25世住職であった風外は、その前は大阪の寺院で住職をしていた。 そこへ足助の人々や役人がやってきて、ぜひ香積寺の…

【一休宗純】「門松は冥土の旅の一里塚」- 禅僧の逸話 -

年が明けた。 巷では、めでたいめでたいと正月気分のまっただ中なのだろうが、そんなお祝い気分に水を差すような禅僧の逸話を1つご紹介したい。 一休さんこと、一休宗純禅師が著わした『狂雲集(きょううんしゅう)』という詩集に掲載されている一句にまつ…

【一休宗純】 読後に、思わず「なるほどねぇ」と唸る禅僧の逸話 

一休宗純という名前ではあまりピンとこないかもしれないが、これが頓知で有名な一休さんの正式な名前である。 アニメの影響からなのか、無理難題に対してひねりを効かせた頓知でするりとかわしていくようなイメージが強いが、書物に登場する一休さんはもっと…

【禅僧の逸話】桃水雲渓 ~乞食として生きた禅僧~

江戸初期の時代に、桃水雲渓(とうすい・うんけい)という禅僧がいた。 現在の福岡県に生まれた人物で、子どもの頃に出家し、20歳を過ぎた頃から諸国を行脚するようになり、多くの禅師に歴参した禅僧である。 桃水はいくつかの寺院の住職を勤めたのだが、島…

【大鑑慧能】六祖と称される禅の大成者の生涯 ~禅僧の逸話~

慧能によって禅が大成され、今日的な世界規模での禅の隆盛に深く関係していると考えることに異論をはさむ者もまた少ないと思われる。 おそらく慧能という名前など聞いたことがないという方も少なくないだろうが、禅宗における慧能の存在は、一般からの認知度…

武田物外(物外不遷)~拳骨和尚の異名を持つ怪力禅僧の逸話~

1795年に伊予国(現在の愛媛県)に生まれ、幕末の時代に世を去った曹洞宗の禅僧に武田物外(たけだ・もつがい)(物外不遷・もつがいふせん)がいる。 物外は不遷流柔術という武術の創始者でもあるが、何よりも有名なのはその桁外れな怪力(だったという伝説…

喝といえば心越興儔と水戸黄門。それから『スラムダンク』。

禅の世界には一字関(いちじかん)とか一転語(いってんご)とか呼ばれる特殊な言葉がある。 一字関(一転語)とは、その一言でもって相手を真理に導く、気付かせる、悟らせるための言葉のこと。 それにはいくつかの種類がある。 なかでももっとも有名な一字…

鳥窠道林と白居易との名問答 「諸悪莫作 衆善奉行」【禅僧の逸話】

8世紀から9世紀を生きた中国の禅僧に鳥窠道林(ちょうか・どうりん)がいる。 鳥窠という名前の意味は、じつは「鳥の巣」。 なぜ鳥の巣などと呼ばれていたかというと、この禅師なんとも不思議なことに、毎日松の木の上で坐禅をしていたという伝説が残って…

【麻浴宝徹】 扇であおいでこそ風は風になる - 禅僧の逸話 -

『正法眼蔵』のなかに「現成公案(げんじょうこうあん)」の巻というのがあり、そこに麻浴宝徹(まよく・ほうてつ)禅師に関する逸話が記載されている。 風にちなんだ、こんな話だ。 夏の暑い日。 麻浴宝徹禅師は扇をあおいで涼んでいた。 するとそこに1人…

【関山慧玄】 雨漏りと小僧とザル対応 - 禅僧の逸話 -

妙心寺の開山(初代住職)である関山慧玄(かんざん・えげん)禅師には、ちょっと有名な逸話が残っている。 雨漏りとザルの話、といえばピンとくる方がいるかもしれない。 こんな話だ。 当時、妙心寺の伽藍は相当古かったのか随分と傷んでいたようで、ある雨…

【誠拙周樗】 寄付とは福田に苗を植えるようなもの - 禅僧の逸話 -

江戸時代中期から後期を生きた臨済宗の禅僧に、誠拙周樗(せいせつしゅうちょ)がいる。 誠拙は伊予国の出身で、宇和島藩主伊達侯の菩提寺、仏海寺で出家し小僧となった。 藩主の菩提寺とあって伊達侯は度々この寺を訪れていたらしく、和尚と話をする際に小…

【雲居希膺】自他の区別がなければ、損も得もない - 禅僧の逸話 -

日本三景として名高い景勝の地、松島。 海にぽっこりと顔を出す大小の島々が美しいこの地に、瑞巌寺という禅寺がある。 伊達政宗の菩提寺としても有名なこの禅寺は、政宗の時代に建設された桃山文化を代表する建造物として、多くの堂宇が国宝・重要文化財に…

【大休宗休】人の評価は死ぬまでわからない - 禅僧の逸話 -

戦国時代、武将今川義元の帰依によって、駿河(静岡県)の臨済寺の住職として招かれた禅僧に大休宋休(だいきゅう・そうきゅう)がいる。 この大休禅師には「人の評価」に関するナルホドな逸話が残っているので、ご紹介したい。 大休禅師のもとに来客があり…

【南隠全愚】金を落としてしまってな - 禅僧の逸話 -

ある時、南隠は交友のある人物の家を訪ねていた。 座り込んで家主と話をしていたのだが、どうも南隠の元気がない様子。 これは何かあったに違いないと察し、家主が南隠に訊ねてみると、南隠は「じつはな……」と重たげに口を開いた。 「今日、とんだ粗相(そそ…

【南岳懐譲】瓦を磨いて鏡となす(南岳磨甎)- 禅僧の逸話 -

「南岳磨甎(なんがくません)」という有名な禅の逸話がある。 8世紀前半の中国での話。 南岳懐譲(なんがく・えじょう)という禅僧のもとに、馬祖道一(ばそ・どういつ)という弟子がいた。 ある日、馬祖が坐禅をしていると、そこに師である懐譲がやってき…

【快川紹喜】 「なるほどねぇ」と唸る禅僧の逸話 - 心頭滅却すれば火も自ずから涼し -

心頭滅却すれば火も自ずから涼し。 禅語であるとも言えるが、この言葉をどこかで耳にしたことのある方というのは、存外大勢いらっしゃるのではないか。 そしてごく自然に、熱い火が涼しいとはどういうことなのだろうと、そんなはずがあるわけないじゃないか…

【盤珪永琢】 読後に、思わず「なるほどねぇ」と唸る禅僧の逸話 

江戸時代前期の禅僧に盤珪永琢(ばんけい・ようたく)がいる。 「不生禅(ふしょうぜん)」という教えを唱え、多くの人に仏法を説いた禅僧であり、逸話も多い。 ある日、この盤珪禅師のところへ一人の和尚が相談にやってきた。 「盤珪和尚さま、私は生まれつ…

【沢庵宗彭】 読後に、思わず「なるほどねぇ」と唸る禅僧の逸話 

白いご飯に添えられる漬け物。 そんな漬け物の代表格は、やはり沢庵漬けだろう。 この沢庵漬けという名前にある沢庵とは、一説には安土桃山時代から江戸前期を生きた臨済宗の禅僧、沢庵宗彭(たくあん・そうほう)にちなんだものと言われている。 沢庵和尚が…

【潙山霊祐】 読後に、思わず「なるほどねぇ」と唸る禅僧の逸話 

坐禅をしたり禅を学んだり修行を積めば、超能力のようなものが得られるのではないかという思いが、人の心にはやはり多少あるらしい。 この問いに答えるには、そもそも禅では「超能力」というものをどう考えているのかを明らかにせずして、答えようがない。 …

【大愚良寛】 読後に、思わず「なるほどねぇ」と唸る禅僧の逸話 

数多いる禅僧のなかでも、1、2を争うほどに人々に知られ、そして親しまれている人物がいる。大愚良寛(だいぐりょうかん)である。 良寛さん、と呼んだほうがわかりやすいかもしれない。 越後出雲崎の名家の長子として生まれた良寛は、俗名を栄蔵といった…

【仙厓義梵】 読後に、思わず「なるほどねぇ」と唸る禅僧の逸話 

私が暮らしている岐阜県美濃市に清泰寺というお寺があり、そこでかつて住職をしていた禅僧に仙厓義梵(せんがいぎぼん)がいる。 仙厓は藩の悪政を狂歌で風刺したことで国外に追放されてしまうが、そんなことは一向に気にもとめなかったという。そして後に博…

【原坦山】 読後に、思わず「なるほどねぇ」と唸る禅僧の逸話 

曹洞宗の学僧として知られた明治の禅僧に、原坦山(はらたんざん)がいる。その坦山がまだ若かった頃、修行仲間と二人で各地を行脚していた頃の話。 ある時、二人は橋のない小川にやってきた。普段であればじゃぶじゃぶと歩いて渡れそうな川幅の小川であるが…