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禅の視点 - life -

幸福とは? 自分とは? 自由とは? 人生とは? 心を満たす入口探し、禅エッセイ

永平寺へ車椅子で参拝することは可能か ~永平寺のバリアフリー~

永平寺全容図

永平寺へ車椅子で参拝する際のポイント

曹洞宗の大本山である福井県永平寺は、急峻な山の斜面を背にして、いくつもの伽藍や御堂などの建造物が建てられている。
斜面であることから必然的に階段が多くなり、車椅子での参拝はできないのではないかと心配されることも多い。
しかし実際にはバリアフリー化の取り組みが行われており、車椅子でもある程度の場所まではどなたでも参拝していただくことができるようになっている
 

また、通常車椅子では到達が不可能となっている永平寺の最上部法堂(はっとう)へも、車椅子に乗ったまま参拝する方法が、あるにはある。
車椅子だからと法堂への参拝を諦めていた方には朗報といえるかもしれないが、あまり知られていない特殊な方法でもあるので、そのあたり元永平寺の雲水ならではの詳細をそっとお伝えしたい。

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車椅子での参拝

永平寺へ参拝に訪れた方々は、通用門という入口から永平寺の中に入る
参拝者の方々にとって入口となるこの通用門は、しかし永平寺の正式な玄関ではない。
永平寺の正式な玄関は山門であり、雲水はみなここから永平寺に上がり修行僧となる。
そして修行を終えて永平寺を去る際にも、山門から出て行く。
修行の初めと修行の終わり、山門を通ることが許されているのはその2回だけ。
なので普段は雲水であっても山門からの出入りは許されていない。
もちろん一般の方も出入りはできない。
そこで、常の出入り口、ちょっと事がある際の出入り口ということで、普段は通用門が使われているのである。


ただしこの通用門は、参道の階段を上がった先に存在しているため、車椅子の方は別ルートで永平寺の中に入ることになっている。
通用門へつながる階段の左脇に車椅子専用のスロープが設けられており、ここから入っていくのである。
スロープの入り口には看板と受話器が設置されており、この受話器から連絡をいただくと、修行僧がお迎えにあがるという仕組みだ。
下の写真を見ればスロープの入口がよくわかることと思う。

永平寺通用門
↑ 通用門と車椅子入口にある受話器


スロープを進むと、永平寺の西端に位置する瑠璃聖宝閣(るりしょうぼうかく)という宝物殿へと入っていくことができる。
この瑠璃聖宝閣を抜けると吉祥閣(きちじょうかく)へ進むことができ、この吉祥閣が一般的に参拝者の方々が最初に訪れる建物となっている。
受付もこの吉祥閣にある。
ちなみに吉祥閣は1971年に完成した鉄筋コンクリートの比較的新しい建物で、地下1階、地上4階からなっている。
雲水のためではなく、参拝者や曹洞宗檀信徒の方々のための研修道場という意味合いの建物となっており、冷暖房完備でもある。

永平寺瑠璃聖宝閣
↑ 瑠璃聖宝閣の内部


吉祥閣から先へは案内板にしたがってエレベーターとスロープを使って進むのだが、問題はこのスロープで、勾配が少々きつい。
おそらく建設当時、あくまでも車椅子を押す付き添いの介助者が存在する前提で作られたものと思われ、一人では上りきることが難しい箇所もある
もし何らかの理由で1人で車椅子に乗って永平寺内を参拝することになった場合は、吉祥閣の1階に伝道部(でんどうぶ)という寮舎(部署)があるので、そこの雲水に声をかけていただければある程度の介助はしてもらうことができる。
ただしずっと付き添って行動することはできないので、車椅子で永平寺に参拝される際は、介助者とともに参拝をされることをおすすめしたい


案内板に沿って車椅子用ルートを進むと、吉祥閣から傘松閣(さんしょうかく)という建物に移り、ここに通称「絵天井の間」と呼ばれる大広間がある。
日本画家144名による傑作の絵画230枚が格天井にびっしりと飾られているこの大広間は畳敷きとなっているが、車椅子のまま上がっていただいて問題ない
色彩豊かな花鳥風月の作品集を、背もたれに寄りかかりながらゆっくりとご覧いただきたい。

永平寺傘松閣
↑ 傘松閣「絵天井の間」


「絵天井の間」がある傘松閣の次は、山門
この山門へといたるスロープがかなり長く勾配がきついので、ここはかならず介助者が必要となる
永平寺の正式な入口である山門へと至ると、そこはもう雲水たちの修行の場となっており、風景が一変する。
開け放たれた板敷きの回廊からは外の景色が眺められ、風が吹き込み、木造建築の伽藍が佇立している。
山門は総欅(そうけやき)造りの唐風の楼門で、間口は九間にも及ぶ。
2階には五百羅漢が祀られており、非常に大きな、また永平寺最古(1749年)の建造物でもある。
山門からは鐘楼堂の大梵鐘や、樹齢700年ともいわれている杉の巨木などを拝観することもできる。

永平寺山門
↑ 山門から中雀門側を見た風景


また山門の両脇には東司(とうす)という名のトイレと、浴室がある。
浴室には入ることはできないが、東司は実際に使用していただくことが可能。
永平寺には七堂伽藍(しちどうがらん)と呼ばれる禅寺の主要な伽藍が7つあるが、そのうちの3つがこの東司、山門、浴室になる。
残りの4つは、僧堂(そうどう)、仏殿(ぶつでん)、大庫院(だいくいん)、法堂になるが、これらは階段を上がらなくてはたどり着けない位置にあるので、車椅子での参拝は不可能となっている。
つまり、車椅子での参拝の場合、通常はこの山門より先には進むことができないのだ。


ちなみに、「絵天井の間」のある傘松閣の1階は祠堂殿(しどうでん)につながっており、この祠堂殿には車椅子のまま参拝することができる。
祠堂殿では納骨や追善供養の法要を行っており、全国の曹洞宗檀信徒の位牌が多く祀られている。
どのような方であっても申し込めば法要を行うことができるようになっているため、この祠堂殿もスロープによってバリアフリー化されている。


以上が、車椅子で参拝することのできる永平寺の伽藍になる。
下の図は車椅子で参拝することができる範囲を示した永平寺全容図である。
黄色い線より下が車椅子で参拝可能範囲。
※赤で囲ってある伽藍は、永平寺の主要な建物である七堂伽藍。
※青で囲ってある伽藍は、七堂伽藍以外で参拝することのできる主要な伽藍。

永平寺車椅子参拝可能範囲図
↑ 黄色い線より下が車椅子で参拝することが可能な範囲

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車椅子で法堂に参拝する方法

上記のように、通常であれば山門より上には車椅子で上がることはできない
ただしある条件下であれば、車椅子であっても特別なルートを通って法堂まで進むことができるようになっているのである。
あまり知られることのないその条件というのは、永平寺に一泊すること


じつは永平寺は参拝のほかに参籠(さんろう)といって、宿泊をすることができるようになっている
そして宿泊をされた参籠者は翌朝、3時~4時ごろに起床して朝のお勤めである朝課(ちょうか)に参列するスケジュールが組まれている
朝課は法堂で行われるため、参籠者は夜の明ける前の薄暗い回廊を雲水の案内のもと進み、法堂を目指す。
その際、車椅子では階段を上がることができないので、車椅子の方は大庫院内に設置されている特別なエレベーターを使用して一気に最上階へと上がることができるようになっているのだ


このエレベーターは通常の参拝では立ち入ることのできない雲水の修行区域に設置してあるため、参拝者の方々は使用することができない
法堂の法要に参列するという大義名分のもとに使用することが認められる、ちょっと特別なエレベーターなのである。


朝課では大勢の修行僧が一堂に会して読経する。
その光景は荘厳の一言で、感激される方も多い
法要のなかでは一度焼香をするのだが、その際には法堂の中心を通って須弥壇の前まで進むこともできる。
その場所は、雲水であっても近づくことのできない場所でもある。
まさに貴重な体験といえる。


このような体験もできる参籠を申し込めば、車椅子であっても法堂まで進むことができるのである。
永平寺での参籠であるため、坐禅があったり、朝が早かったり、多少厳しいこともないことはないが、精進料理を食べることができたり、老師の話を聞くことができたり、朝課に参列することができたりと、貴重な体験をすることもできる


私が永平寺で修行をしていた時にも、車椅子で参籠された方は何名もいらっしゃった。
実際にその方々の車椅子を押して、特別ルートを案内したことも何度もあった。
車椅子の方に対しても開かれた寺院であってほしいと願っているし、参籠という体験も素晴らしいものなのではないかと思う。
なので車椅子に乗っている方でも、永平寺への参籠に興味があれば、どしどし申し込んでいただきたい
きっと素敵な思い出になると思う。
永平寺への問い合わせは TEL 0776-63-3102(永平寺総受処)へ。

今はなき諸堂拝観

永平寺で修行経験のある者なら全員周知の事実なのだが、永平寺には伝道部という寮舎に所属する雲水による永平寺内の案内&説明を行う「諸堂拝観」という拝観のサポートが存在していた。
一般の方がこの諸堂拝観を申し込めば、雲水が1人付き添って永平寺内を一緒に歩き、説明を交えながら案内をしてくれていたのである
この諸堂拝観に限り、件のエレベーターを使用することが認められていたので、つい数年前までは参籠ではなく参拝でも法堂までたどり着く方法は存在していた。
しかし今現在は諸堂拝観自体が廃止になってしまったものだから、エレベーターも使用することができなくなってしまったというわけなのである。
残念だが、仕方ない。


雲水の人数が減ってきており、人員を割くことができなくなってきたのか、理由はよくわからないが、とにかく一般参拝者のための諸堂拝観はもう存在しないので、エレベーターを使用することはできない。
つまり車椅子で法堂にたどり着く方法は、参籠者として永平寺に一泊する方法だけになってしまったのである。
法堂に参拝したいけれど車椅子に乗っていて階段が上がれないと悩んでおられる方は、参籠という方法があることをどうぞ知っておいていただきたい。
一泊することが条件にはなる。
それがハードルを上げていることは間違いない。
ただ、宿泊場所である吉祥閣は、冷暖房完備だ。