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童謡「山寺の和尚さん」の歌詞が怖くて酷くてちょっとだけ深い

童謡「山寺の和尚さん」歌詞

童謡「山寺の和尚さん」の歌詞が怖くて酷くてちょっとだけ深い


うちの子どもが通っている保育園には、オペレッタという軽歌劇がある。
童謡や昔話の世界観を全身で表現しつつ、セリフによってストーリーを進めていくという演劇のようなもので、これが観ていて非常に面白い。


それで、毎年冬の発表会のときに市の文化会館のステージでこのオペレッタが披露されるのだが、そこではオペレッタだけでなく歌も披露される。
そしてその歌のなかで私は人生ではじめて、「山寺の和尚さん」なる、恐怖の童謡に遭遇した……



恐怖の「山寺の和尚さん」

ピアノの伴奏とともに、子どもたちが元気よく歌い始める。


「山寺の~ 和尚さんが~」


ほう、山寺の和尚さんが、と来たか。
私のことだな。
それで、私がどうしたって?


「毬は蹴りたし~ 毬はなし~」


ああ、毬を蹴りたいのね。
確かにたまにはボールを蹴ってサッカーでもしたいなと思うことがないこともないけど、その肝心の毬がないのか。
残念な話だね、こりゃ。


「猫をかん袋に~ 押し込んで~」


うんうん、猫を押し込むのね。
えっ、猫をなに袋に押し込むって?
……猫を袋に押し込む!?


「ポンと蹴りゃ~ ニャンとなく~」


……今、なんて?
猫を蹴ったらニャ……


「ニャンがニャンとなく~」


おい、ダメだろ、そりゃ。

猫をなんとか袋に押し込んで、蹴って、ニャンと鳴かせちゃだめだろう。
そりゃ鳴くよ。なに袋か知らないけど。なに袋でも鳴くよ。


というか、泣くよ? 私が。


「ヨ~イヨイ」


アウト。


アウトだわ。アウトアウト。
もうビデオ判定とかまったく必要ないくらい、ファーストに送球されてしっかり捕球して、3秒後にバッターが一塁にスライディングしてきたときくらい、アウト。
セーフの余地ないわ。


童謡としてアウト。
情操教育としてアウト。
歌としてアウト。


……ていうか、怖っ。
えっ、アウトを通り越してなんだか怖くなってきたんですけど。
全力で歌う子どもたちの姿がまぶしい分、余計に闇が深い気がするんですけど。


……これでいいの?
発表会で披露する歌のチョイス、何か間違ってないの?


全力で

「ポンと蹴りゃ~ ニャンとなく~」


とか、恐ろしい歌詞をすごくまぶしい姿で子どもたちが歌ってるんですけど、いいの?
正解なの? 正解とかないの? 正解とか考えたらもう迷いの中なの? 禅問答なの?


「山寺の~ 狸さん~」


二番来たよ、おい……。


ちょ、ちょっと待って、心の準備が……。
大きく口を開けて一生懸命に歌うその美しい姿から、一体どんな歌詞が放たれるのか。
聴くのが怖いなんて思いはじめてだよ。


「太鼓打ちたし~ 太鼓なし~」


やめて。

何かが「無い」っていう一番の流れを踏襲するの、やめて。
代用するよね? 次は犬か?
ぜったい何か代用して打つ気でしょ? なんとか袋に押し込んで。


だってそれしかないもん、流れ的に。
もう怖いよ。


「そこでお腹を~ チョイと出して~」


……ああ、そっちが来たか。
自分のお腹を代用する流れね。
微妙に一番とは外してくるやつね。
まったく同じだと芸がないと思われることを危惧して。


狸だし、自分でお腹を叩くくらいならちょうどいいな。
いい音鳴りそうだし。
なんだか急に童謡感が溢れる歌詞になったな、おい。


こっちはさ、また動物をなんとか袋に押し込んで叩くんじゃないかと思ってヒヤヒヤしたよ……。


「ポンと打ちゃ~ ポンと鳴る~」

「ポンがポンと鳴る~ ヨ~イヨイ」


二番はまあ、いいでしょう。
でも一番の歌詞っ! そっちは常軌を逸してるからなっ!。
なんとか袋に押し込んで、猫を蹴るとか、絶対ダメだからなっ!!


歌詞の解釈

あまりにも衝撃的な歌をノーガードの状態で聴いたものだから、その時はダメージが大きかった。


しかし後日、この話をある人に話したところ、思いもよらない言葉が返ってきた。
なんと、あの問題の歌詞は風刺なのだという。


和尚さんは聖職者と呼ばれるような立場にあるが、そんな人物が猫を袋に入れて蹴るという歌を歌うことで、お高くとまっているんじゃねえぞ、テメェなんてそんなもんだろうが、みたいな、風刺を歌っているのだという。


……へぇ、そんな解釈があったとは、すごいな。
風刺されてたんだ、私。
それなのに、1人で怖がってて……。
何をやっていたんだろう。


……ちょっとだけ深いかも。
いや、「ちょっと深い」って矛盾してるか?
ちょっとなのか、深いのか。
うむ、わからん。


というか、
本当かよ、その解釈。


※どうやら本当のようでした。
以下の記事に、そのあたりのことが詳しく書かれています。
昭和初期の戦前に大流行したジャズが基歌になっているというのには驚きでした。



童謡「山寺の和尚さん」の歌詞全文

作詞・不詳  作曲・服部良一


山寺の 和尚さんが
毬は蹴りたし 毬はなし
猫をかん袋に 押し込んで
ポンとけりゃ ニャンと鳴く 
ニャンがニャンと鳴く ヨイヨイ 


山寺の 狸さん
太鼓打ちたし 太鼓なし
そこでおなかを チョイと出して
ポンと打ちゃ ポンと鳴る
ポンがポンと鳴る ヨイヨイ

実際に「山寺の和尚さん」を聴いてみる

いやあ、動物虐待の歌かと思って、ほんとにヒヤヒヤしたよ……
まさかあんな歌を聴くことになるとは。


ちなみに、猫を押し込んだ「かん袋」という謎の袋は、「紙袋」の発音が訛ったもので、ただの紙袋のことだった。


実際の歌がどのようなものか知りたくなった方は、ユーチューブで動画の視聴を!
ジャズがもとになっているという話にも納得がいくので、オススメ。