多羅葉の葉をハガキの代わりに投函する際の注意点
葉書が考え出されるきっかけとなった多羅葉(たらよう)の葉っぱ。
この葉は、葉の裏側に傷を付けると黒く跡が残るため、その性質を利用して文字を残しておくことができる。
つまり先の尖ったもので文字を刻むことで、紙のように使用することが可能という不思議な葉っぱだ。
この多羅葉の性質にヒントを得て現在の「葉書」を考案したのが、「郵便の父」と称される前島密である。「葉に書く」と書いてハガキなのはそのため。
このあたりの話は、下の前回記事に詳しくまとめてある。
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今回は、この多羅葉の葉っぱを用いて、実際に葉書として使用する際の注意事項などをご紹介したい。
多羅葉を探す
まず、そもそも多羅葉がどこに植えられているかを突き止め、その葉を手に入れないことには手紙が書けない。
これこそ最初にして最大の難関と言える。私も探すのに相当苦労した。
途中、もう探すことに断念して、これは多羅葉の苗木をネットで買って自分で育てるしかないか、という究極の選択まで考えた。
実際ネットで苗木を買うことは可能で、値段も1000円程度と普通である。
まあ、そうなっても大きな葉がとれるまでに一体何年費やすことになるかはわからないが……。
そんなふうに諦めかけたとき、幸いにも知り合いの寺院で多羅葉の木を発見し、葉を譲っていただける厚意を受けて事無きをえた。
あのときは本当にありがたかった。もうダメだと思っていた。
ただし寺院で多羅葉を見つけたことはまったくの偶然ではない。
むしろ探すなら、ターゲットは神社仏閣に絞ったほうが絶対効率がいい。
というのも、多羅葉と神社仏閣には縁があるのだ。
神社仏閣に多羅葉が植えられている理由
多羅葉の樹は郵便局のシンボルツリーであることから郵便局にも植えられていることがあるそうだが、探すのならおそらく神社仏閣のほうが可能性は高い。
神社仏閣に多羅葉が多く植えられている理由は、古代インドで葉に経文を記した貝葉経が作られたことと無関係ではないだろうが、もう1つ大きな理由がある。
多羅葉の葉は火であぶると黒い斑点が浮かび上がり、その性質を利用して占いに使用されてきた歴史があるのだ。
神社仏閣に多く植えられている理由の本命は、むしろこちらの占いにあるのではないかと個人的には思う。
多羅葉の見分け方
多羅葉はどこにでも生えているような常緑樹の姿をしているので、一目見ただけではなかなかそれとはわからない。似たような木がいくつもある。
見分け方としては葉の裏に傷をつけてみるのが一番確実だが、器物損壊にあたるのでそれはできない。
なので見た目である程度判別しよう。
↑ 多羅葉の葉
見るべきポイントは、手の平ほどの少し大きめの葉で、葉の周囲がノコギリの刃のようにギザギザになっているかどうか。
これで幾分判別することが可能だ。
あやしいと思う木があったら、まずは近づいてギザギザかどうかを確認してみよう。
↑ 多羅葉の葉の表側
↑ 多羅葉の葉の裏側
ただし、もしギザギザだったとしても、浮かれて勝手に葉をちぎることは御法度。
きちんと所有者に相談して、許可を受けてからいただくのでなければ窃盗である。
公園などに多羅葉が植えられていることもあるが、ほとんどの公園は植物の持ち帰りを認めていない。
もし見つけても持って帰ることができないのであれば意味がない。
そういう点から考えても、神社仏閣で多羅葉を探すことは理に適っている。
数枚譲ってほしいとお願いした際、所有者が「NO」と言う可能性が低いからである。
多羅葉の別名
多羅葉探しで1つ注意しておきたいのは、多羅葉を探していると人に尋ねても、相手が「多羅葉(たらよう)」という名前でその木を覚えているとは限らないということ。
この木には別名が多く存在するのである。
私がざっと知ったものでも、「エカキバ」「カタツキバ」「バイタラ」「ジカキシバ」など、字や絵を描くことができるという特徴にちなんだ名前がいくつもあった。
実際ある住職と話をしていて、その住職の寺院にも多羅葉があったのだが、その木を多羅葉とは呼んでいなかったために、あやうく話がすれ違いで終わるところだったということがあった。
「多羅葉という、葉の裏側を尖ったもので傷つけると跡が残り字を書くことのできる葉」と、多羅葉の特徴を言えば間違いなく通じるはずなので、名前だけで探すのは気をつけたほうがいい。
多羅葉の保管場所
どうにかして実物の葉を手に入れることができたなら、あとは書くだけ。
しかしここでもいくつかの注意点がある。
まず葉の保管場所であるが、これは湿気のない場所を強くおすすめする。
私がはじめて多羅葉を発見して持ち帰ったのは梅雨の時期で、湿度は超高め。
しかしその時は葉の状態と湿度との間に因果関係があるなどとは、梅雨であったけれども露程も思わず、そのまま室内に放置した。
すると、翌日には葉に異変が起きていた。
どのような異変かというと、下の画像のようになったのである。
↑ 斑点が出た多羅葉の葉
葉の全体に細かなシミのような斑点が浮き出て、せっかく書いた文字が見えにくくなってしまったのだ。※上の画像は文字を書いていない葉に出た斑点のようす。
これに湿気が関係しているとはすぐには判断できなかったが、昔は多羅葉に文字を書いたら防湿防腐のために青竹のなかに入れたという話を前に本で読んだことを覚えていたため、おそらく湿気が関係しているのだろうと予想した。
そして再び多羅葉が植えてある知り合いの寺院へと向かい、もう一度葉を譲ってもらい、今度はエアコンのドライを常時運転させて湿度50%をキープして保管してみた。
そうしたら斑点は出てこなかった。
間違いなく湿度が関係していると突き止められたわけではないが、少なくとも湿度の低い部屋では斑点が出にくいという感触は得られた。
なので多羅葉を手に入れたらなるべく湿度の低い場所で管理し、なおかつ新鮮なうちに文字を書くことをおすすめしたい。
せっかく入手した多羅葉の葉が台無しになる前に。
文字の書き方
多羅葉の裏側へ文字を書く際には、なるべく尖った道具を準備したほうが文字が書きやすい。
安全ピン、針、爪楊枝で試してみたが、材質は固い物のほうが書きやすかった。
爪楊枝でも書けないことはないが、文字が太くなり、かつ深く傷が付かずに文字の色が薄くなる。
金属製の尖った物で傷をつけると、細く深く傷を付けることができるので、文字がくっきりとする。
なのでオススメな道具は、針か安全ピンである。
また、書く際に葉を左手で押さえるが、これもあまり全面を押さえないほうがいい。
傷つけなくても、どうやら圧でも反応を起こすようで、黒ずむことがあるのだ。
できるだけ葉の周囲を押さえるようにして、書く面には極力触れないようにしよう。
ちなみに、多羅葉の黒ずみ反応はかなり敏感で、ティッシュで表面をさっと拭いただけでも筋が跡として残るほど。
繰り返しになるが、極力触れないように傷つけないように気を付けて書こう。
黒ずみ現象の反応の止め方
葉を入手後、傷つけた箇所の黒ずみ現象がいつまで続くのかはよくわからない。
葉っぱを枝から切断し、1週間ほど経ってから傷つけてみたら、若干反応が弱まっている気がしたがそれでも黒ずみ現象は起きた。
つまりせっかくキレイに書くことができても、郵送中に傷付いて、配達されたころには黒ずんでいるという可能性も無きにしも非ずということになる。
そのような思わぬ黒ずみ現象はなんとかして止めたいのだが、その簡単な方法が1つある。
レンジでチンだ。
問題は温める時間で、1枚入れて10秒温めればまず間違いなく反応は止まる。これは確認できた。
5秒の温めでも反応は止まる。これも確認できた。
ただし問題もあって、温めによって葉に黒い模様が浮き出てしまう場合がある。
火であぶるのと同じ効果を与えてしまったことによる反応だと思われるが、これが起こると手紙が台無しになる。
せっかく時間をかけて書いた葉が、温めによって瞬時に葉が黒くなった時のがっかり様といったらない。
不思議と黒い模様が出ないときもあり、まさに占いのようでアタリとハズレが混在し、ついにそれを分かつ原因がどこにあるのかは結局突き止めることができなかった。
もしかしたら本当に気まぐれで出現するのかもしれない。
ただいずれにしても、温めるなら時間は5秒で十分だというのが私の見解である。
黒い斑点の出現を考慮したら、もしかしたらベストはさらに短く3秒くらいかもしれない。
急ぎでなければ無理にレンジで温める必要はなく、時間の経過によって反応が止まるのを待つのも1つの手。
枯れたようになった葉では黒ずみ反応が起きないことも確認できたので、枝から切断して文字を書いたあと乾燥した場所でしばらく保管し、完全に水分が抜けてから投函するという方法を採れば、かなり高い確率できれいなままで届くはず。
多羅葉の葉は定形郵便物? 定形外郵便物?
ここで少々事務的な話を。
郵便物の分類は主にサイズと重さによって定められている。
いわゆる、定形郵便物と定形外郵便物の違いである。
しかしこれにはいくつか例外があるので注意が必要。
まず、そもそも定形郵便物とは、長辺が14cm~23.5cm、短辺が9cm~12cm、厚さが1cm以内、重さが50g以内という条件に合うものを指す。
注意しなければいけないのは、最小サイズが規定されている点である。
あまりにも小さいものは配達してもらえないのだ。
ただしこれにも例外があって、14cm×9cm以下の物であっても、12cm×6cm以上の大きさで、耐久力のある厚紙または布製のあて名札を付ければ差し出すことが可能となっている。
つまり今回の多羅葉の葉も、最低でも12cm×6cm以上の葉を用いなければ配達してもらえないということになる。なるべく大きめの葉を選ぼう。
それで、大きめの葉であれば定形郵便物の条件に合うから定形郵便物として送ることができるかと思いきや、じつは葉っぱのままで送ろうとすると「定形外郵便物」に分類されることになる。
なぜ「定形外」なのかというと、定形郵便物とは長方形でなければいけないという例外ルールが存在するからである。
そのため、星形やハート型などの郵便物は、たとえそれが定形のサイズ内におさまるものであったとしても定形郵便物とはならない。
定形外郵便物になる。
正方形もダメ。
このあたりは一切融通がきかない。
したがって、多羅葉の葉っぱは定形外郵便物となる。
郵便物の金額
郵便物の金額であるが、まず定形郵便物の料金は以下のとおりとなっている。
- 25g以内:82円
- 50g以内:92円
※50g以上:定形外に分類される
定形外郵便物の料金は、規格内か規格外かで料金が異なる。
規格というのは、長辺34cm以内、短辺25cm以内、厚さ3cm以内、重さ1kg以内というものである。
多羅葉の葉であれば間違いなく規格内になる。
定形外郵便物で規格内の金額は以下のとおり。
- 50g以内:120円
- 100g以内:140円
- 150g以内:205円
- 250g以内:250円
- 500g以内:380円
- 1kg以内:570円
※1kg以上は規格外に分類される
この決まりに従えば、羅多葉の葉を葉っぱのまま出せば「定形外郵便物」の「規格内」の「50g以内」に分類され、金額は120円になる。
なので120円切手を葉に貼って投函すればOK。
ただし、これにも裏技というか別の方法があって、葉を定形郵便物で送ることも不可能ではない。
どうするのかというと、葉を定形サイズの封筒などに入れて送るのである。
それなら郵便物自体は長方形の定形封筒であるため、金額は25g以内かどうかで82円か92円になる。
しかし大方の意見として、それでは面白くも何ともないのではないかという意見が当然のごとくあがると思う。
葉っぱが届いてこそ意味があるのであって、封筒から葉が出てくるのではまったく意味がないと。
それは、まさにごもっとも。
なのでこの方法を採る際には、茶封筒などではなく透明なpp袋に入れたほうがいい。
定形かどうかである判断に材質は関係してこないので、透明であってもサイズが定形内であれば定形郵便物に分類されるのである。
透明であれば袋が目立たず、葉が届いた驚きもそれなりに維持できる。
配達途中で傷付く恐れも破損する心配もない。
さらに82円で送ることができる。
葉っぱのまま定形外で120円で送ったほうがインパクトは強いだろうが、安全策をとるなら透明pp袋作戦もありだ。
葉の状態を見極めて、どちらにするか選択しよう。