六曜の意味と機械的な割振りの事実を知っても、まだ六曜を気にする?
カレンダーなどに記載されている六曜(ろくよう)で物事の良し悪しを決める習慣は、科学的思考や合理的判断が常識化している現代社会においても根強く存在している。
たとえば、
友引の日に葬儀をすると、弔問に訪れた友を一緒にあの世へ連れて行ってしまうようで縁起が悪いから、友引の日に葬儀はしない、とか。
仏滅は仏が亡くなるくらい大凶の日だから予定は組まない、とか。
大安は万事に吉の雰囲気が漂っているから、結婚式は大安にしよう、とか。
「吉凶なんていう非科学的な迷信をもとに行動するなんて……」
と思う一方で、
「そういえば子どもの名前を考えるときに字画を考慮したんだったっけ」
という方も少なくないのではないか。
六曜と合理性と人間
どれだけ科学が発展し合理性が世界を覆っても、人の頭から占い等を気にする気持ちが完全に消えることはないのかもしれない。
人はそもそも合理性だけで生きているのではなく、非合理的な部分を楽しんでしまう一面をもった生き物だから。
とはいえ、占いなどを気にしない私としては、たとえば大安に結婚式を挙げても離婚する夫婦はいくらでもいるのに、なぜそれほどまでに大安の日取りを気にするのかといったことに疑問を感じないわけではない。
だから
「夫婦生活に不可欠なのは迷信を守ることではなくて、本当に大切なものを守ることだ」
と考え、仏滅の日に結婚式を挙げる夫婦がいたら、ぜひとも祝福させていただきたいと思ってしまう。
もしかしたら仏滅に結婚式を挙げた夫婦のほうが、大安に式を挙げた夫婦よりも離婚率が低いのではないかというのが、私のひそかな予想でもある。
今回はそのような、切り離せそうなのに見えない糸がなかなか切り離せない六曜の、意外と知られざる裏側に注目してみたい。
そもそも六曜って何?
カレンダーや手帳などには、節気(夏至、冬至など)などとともに六曜が記載されていることが多い。
若い世代ほど六曜を気にしないという傾向があり、最近はまったく六曜を記載していない暦や、大安だけが記載してある暦も少なくないが、それでもまったく目にしたことがないという方はあまりいないことだろう。
自宅にカレンダーがない若い方であっても、どこかで一度くらいは目にしているのではないか。
しかし、仮に六曜の存在を知っていたとしても、その意味となるとあまりよくは知らないという方も大勢いることと予想されるので、まずは簡単に六曜の説明から。
六曜(先勝・友引・先負・仏滅・大安・赤口)の意味
六曜とは、先勝・友引・先負・仏滅・大安・赤口の6種によって構成される暦注の1つである。
暦注とは、カレンダーなどの暦に記入される諸々の事項のこと。
カレンダーを見ていただくとわかりやすいが、暦には日付以外にも、曜日・祝日・節季・月の満ち欠けなど、おもに天文学に関する様々な事項が記載されている。
これらを総称して暦注という。
六曜はこの暦注の1つで、天文ではなく占い的な性格の暦注である。
これら六曜は、もともと時間を区切る指標として活用されていたと考えられているが、現代では逆に占い的な性格を持つ六曜によって人の行動が制限されるという逆転現象を引き起こしている。
そして現代にいたって六曜は、日時の吉凶を示すものとして認識されるようになっている。
そんな現代における六曜の吉凶、あるいはそれぞれの言葉の意味は、以下のとおり。
六曜は占い的な性格の暦中で、主に日時の吉兆を示す
先勝
「先んずれば即ち勝つ」の意で、要するに早いほうがいいということ。
昔は「速喜」「即吉」と書かれていたことからも、言葉の意味が理解できる。
午前は吉、午後は凶というような感覚。やるべき仕事は後回しにせず、さっさと片付けてしまおう。
読み方は「せんしょう」「せんがち」「せんかち」「さきがち」「さきかち」などがある。
友引
「凶事に友を引く」の意で、災いが友に及ぶということ。
ただし本来は「共引」と書かれており、意味も「勝負なき日」、つまりは引き分けになる日という意味であった。
現在のような意味は後世に作り出された根拠のないもの。
しかし根拠がないとしながらも、現在、友引の日には通常葬儀を行わない。
その説明として一般的なのは、やはり「友を引く」、つまり参列者をあの世へ連れて行ってしまう(=死がおとずれる)という不吉な「友引」という言葉の解釈を根拠としている。
ただし実際のところは、そんな単純な話ではない。じつは葬儀業界全体の休暇事情なども深く絡んでいる。
もし友引にも葬儀をすることになったら、葬儀場スタッフや火葬場スタッフも365日休みがなくなってしまう! という、なんとも現実的な危機が懸念されたりしている。
そんな理由嘘でしょ!? と思うかもしれないが、本当の話。それだって友引に葬儀をしない理由の1つなのだ。
長時間労働が問題視されて久しい現代では、おそらく今後も友引に葬儀をすることにはならないだろう。
先負
「先んずれば即ち負ける」の意で、急がば回れ、急いては事をし損じるということにもつながる。ウサギとカメでいえばカメ派。
ただし昔は「小吉」と書かれていたこともあり、基本的には吉日と考えられていた。
午前は凶、午後は吉というような感覚。
読み方は「せんぶ」「せんぷ」「せんまけ」「さきまけ」「さきおい」など、先勝と同様で多種ある。
仏滅
六曜における大凶日。仏陀も滅する(亡くなる)ほどの凶日とよく解釈されるが、本当は仏教とはまったく無関係。
もともとは「空亡」や「虚亡」と記したものが、意味の上で「すべてが滅ぶ」と解釈され「物滅」と表記されるようになり、明治時代に暦学者が「物」に「仏」の字を当てたことから仏滅と表記されるようになっただけのこと。
なので仏教とは何の関係もない。
だいたい、6日に1度ブッダ亡くなるって……なんちゅう頻度だ。
物滅の面白い解釈としては、何事も新しくはじまる前に古いものは一度滅びるということから、物事を始める際には良い日だという解釈がある。
ここまでくると、病院の病室番号の4と9を「死」「苦」と読むか、「良く」なる、と読むかのような、一種の言葉遊びの世界と何も違わない。
大安
「大いに安し」の意で、六曜における大吉日。
そのため結婚式などの慶事は大安を選んで行われることが多い。
ほかにも、たとえば車の納車日を決める際にもディーラーは大安を考慮する。
新しい靴を履くといった日常生活においても、大安を選ぶ人はいる。
読み方は「たいあん」が一般的であるが、「だいあん」と読むこともある。
ただし昔は「泰安」と書かれていた言葉であるため、「たいあん」と読むほうが正しいと考えられている。
赤口
一説には仏滅を超えるとすら噂される凶日。
陰陽道の「赤舌日」という凶日に由来すると考えられており、六曜の中では唯一名称が変わっていない。逆にいえば、他はすべて本来の名称ではないということになる。
伝言ゲームに失敗したのか、はたまた作為的なものか。
赤口は「赤」の字が付いていることから、火、あるいは刃物(血)に気を付ける日と解釈されることが多い。
基本的に凶日と考えられているものの、正午前後のみは吉とされる。
昼ご飯は安心して包丁を使って調理することができるようだ。
読み方は「しゃっこう」が一般的であるが、「しゃっく」「じゃっく」「じゃっこう」「せきぐち」「あかくち」などと読まれることもある。
六曜の割り振り
以上のような意味を持った六曜であるが、この6種には順番が決まっており、必ず先勝→友引→先負→仏滅→大安→赤口の順に1日ごとに進み、赤口の次は先勝に戻る。
割り振りの元になるのは旧暦で、旧暦の毎月1日は以下のように六曜が割り振られると最初から決まっている。
- 1月と 7月 → 先勝
- 2月と 8月 → 友引
- 3月と 9月 → 先負
- 4月と10月 → 仏滅
- 5月と11月 → 大安
- 6月と12月 → 赤口
つまり、旧暦の1月1日は必ず先勝となり、2日は必ず友引、3日は必ず先負というように、月日によって機械的に割り振られているだけなのである。
ちなみに、旧暦というものも詳しく知るとなかなか面白いので、興味のある方は下の記事をどうぞ。
六曜のズレと旧暦の関係
よく目にする縦7列のカレンダーに六曜を割振っていくと、六曜は6つしかないので1つ下の週になるたびに左下に六曜がずれていく。
下の画像のように。
ちなみに画像のカレンダーは2017年7月のもの。
ただしよく見ると、5週目で左下にズレる法則が崩れているのがわかる。
どこまで順序が守られているか確認してみると……
7月22日までは前述の「先勝→友引→先負→仏滅→大安→赤口」の順序が守られてきているのに、7月23日がいきなり赤口に!
なぜだ!? と思われるかもしれないが、理由は簡単。
ちょうどここで旧暦の月が替わったため。
試しに旧暦カレンダーで確認してみると……
やっぱり月が替わっているのが確認できる。
7月22日が旧暦の閏5月の最終日で、7月23日が旧暦の6月1日になっている。
そして旧暦6月の1日は、前述のように赤口と決まっているので、六曜は赤口。
完全な機械的割り振りで、最初からすべて決まっている。……何の面白味もないではないか!!
これが六曜の残念な真実なのである。
六曜はただ機械的に割振られているだけ
旧暦が六曜に与えるランダム性
新暦と旧暦では1ヶ月の長さが異なるので、旧暦に基づいて割振られる六曜は、新暦のカレンダーでは時折妙な動きをみせることになる。
それがちょうどよいランダム性を生んで、いわばスパイスのように効いて、占いっぽい要素をもたらしているわけであるが、カラクリを知ってしまうと六曜のどこにも面白味はない。
六曜はただ、機械的に割振られているだけなのだ!
気にするほどのものとは到底いえない六曜。
……それでもあなたはまだ、六曜を気にしてしまう?