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お茶出しのマナー「右からだっけ? 左からだっけ?」に悩む方へ

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お茶を出すときのマナー


お客さんがやってきた。
さて、お茶を出そうかな。


そんなときに、ふと心配になるのが「正しいお茶の出し方」。
相手が気心の知れた友人であれば細かなマナーを気にしなくても問題ないでしょうけど、仕事相手や客人ではそうも楽観的にしていられませんよね。


かしこまりすぎる必要はありませんが、失礼があってはいけないと思うのが心情でしょうし、おもてなしをするという面から考えても、やはりある程度の礼節はわきまえておきたいところ。


そこで今回は、意外と知られていない「お茶の出し方」について簡単にまとめてみたいと思います。お茶を出すという行為は単純そうにみえて、じつはけっこう細かなマナーやポイントがあるので、主要なところを理由とともにおさえていきましょう!


難しいことは何もないから、ササッと覚えちゃいましょ


お湯の温度


お茶を出すのだから、当然、まずは台所や給湯室でお茶を準備しなくてはいけません。


このとき、茶葉に注ぐお湯の温度は、番茶やほうじ茶であれば熱湯(100℃)で、玉露などの上質なものほど低温(50℃~60℃)であるほうがいいです。


これにはもちろんちゃんとした理由があります。


そもそも、茶葉に含まれる成分には「苦味・渋味」を出すものと「甘味・旨味」を出すものと、大きく2種類あるんですね。


代表的なのは、

  • 苦味のカテキン
  • 甘味のテアニン


になります。そして苦味を出すカテキンは高温で溶け出し、甘味を出すテアニンは低温で溶け出るという特徴があるのです。


ふむふむ、温度によって溶け出す成分に違いがあるのね


たとえば玉露はこのうちのテアニンが多く含まれており、甘味や旨味を強調して飲むことに適しているため低温で淹れるというわけです。


反対に、テアニンが少ないほうじ茶などは低温だとただ味が薄くなってしまうだけなので、熱湯でしっかりと成分を抽出して香りと味わいをしっかり出そうという狙いなわけです。


茶葉を入れてある袋や缶などにはお湯の適温が書かれてある場合も多いので、一度調べてからお湯を注ぐのがオススメ。せっかくなら美味しいお茶を召し上がっていただきたいですもんね。

 甘味や旨味の玉露は低温
 ほうじ茶などは高温で香りを出す

茶碗と茶托


お茶を湯飲みに淹れたら、部屋までお茶を運びます。


このとき、たとえ湯飲みが1つであったとしても、お盆にのせて運ぶのがもちろんマナー。茶托に乗せた湯飲みを手で持って(手盆)いくのはかなり無礼なのでNG。これだけは絶対やめましょう。


それと、運ぶときにもう1つ注意したほうがいいのが、お盆にのせた段階では湯飲みと茶托は別々のままにしておいたほうがいいということ。茶托の上に湯飲みをセットした状態で運ぶのはあまりよろしくないのです。


なぜかというと、運んでいる最中にいつのまにかお茶が湯飲みからこぼれていることがあるから。湯飲みのお茶って、意外とすぐにこぼれるんですよね。


もし茶托の上に湯飲みをのせた状態でお茶がこぼれると、当然のことながら茶托が濡れます。そのままの濡れた状態でお茶を出すのは失礼ですし、茶托が濡れていると湯飲みを持ち上げた際に茶托が湯飲みにくっついてくるという珍事が起こる可能性があります。


お客さんがいざお茶を飲もうと思い、手にとった瞬間、茶托が湯飲みの底にくっついてきて、しかも途中で落ちて机にぶつかりカランコロンと大きな音が出たときの気まずさといったらないので、湯飲みの底が濡れていないかちゃんと確かめてから茶托にのせて出しましょう


「カランコロン現象」はホント気まずいね、すんませんっ! てなる


もちろん、濡れていたら布巾などで拭いてから茶托にのせましょうね。なのでお盆には布巾をのせるのを忘れないように。もしくはポケットに入れておくように。


もし忘れてしまっても、「乾燥した手でぬぐいとる作戦」を決行するのではなく、そっと布巾を取りに戻ったほうが無難ですよ。

 茶托が濡れていると、相手にいい加減な印象を与えてしまうので要注意


お盆の置き場所


部屋にお茶を運んだ際、けっこう戸惑うのがお盆の置き場所


畳の部屋であれば畳の上にお盆を置いても問題ないから何も難しくないのですが、問題なのは洋室の場合。お客さんが椅子に座っているところでは、当然床になんて置けません。


サイドテーブルがあればそこにお盆をのせればいいので助かるのですが、台になるものが何もなければ机の上の一番下手側に置くしかありません。そこで茶托に湯飲みをのせて(底が濡れていたら布巾で拭いて)、1人ずつお茶を出す。


湯飲みが濡れているのを発見! 乾燥した手……じゃなくて布巾出動!


お茶を出す際は両手で出すのがマナーなので、お盆を片手で持ったまま、もう片方の手でお茶をだすということは基本的には無しです。お客さんがとんでもない大人数の場合はお盆を持って回って各人に湯飲みを取ってもらうという裏技もありますが、通常はそのようにはしません。

 お盆を持ったまま片手でお茶を出すということは基本的にはしない

お茶を出すのは右から? 左から?


一応、お茶は相手の右側から出すのがマナーとされています。


しかし部屋が狭かったり、人が詰まっていてスペースがなかったりすることも十分にありえるので、そうした場合は左からでも問題ありません。スペースのないところに割り込んでまで右にこだわると相手がびっくりするだけなので、左右問題はその場で臨機応変にいきたいところ


お客さんが団体さんだと、ほんと手が回らなくなるよね、セルフに変更だわ


お茶は両手で出すのがマナーだと前述しましたが、これも席が狭かったりするとなかなか難しい場合があります。そんなときは、茶托をしっかりと摑むのは相手から遠いほうの手だけにして、もう片方の手は添える程度にしてもOK


たとえば右から出すのであれば、相手は自分の左にいるので、遠いのは右手。なので右手で茶托をしっかりと持ち、左手は添える程度にする。


両手でがっつりと持つよりも、左右に強弱があったほうがスマートにも見えるので、普段からそのようにしても大丈夫です。


ちなみに、人数がとんでもないことになって、左右などと言っていられない状況になることもたまにはあります。もし前からしか出せないような状況であれば前からでかまわないので、「前から失礼します」と一言添えてお茶を出しましょう


セオリーにこだわりすぎてスマートさを欠くことのほうが、相手にとっては煩わしく感じるものです。

 お茶は相手の右側から出すのが基本だが、実践の際はセオリーに捉われずスマートに


お茶とお菓子はどちらが先?


これはよく疑問に思われるところだと思いますが、結論から言えば、意外にもどちらが先とは決まっていません。なぜかというと、決まっているのは出す順番ではなく、置く位置のほうだから。


どういうことかと言いますと、お茶とお菓子は、右がお茶で、左にお菓子を置くのがマナーなのです。これはしっかりと覚えておきましょう。


五七五で、「お茶が右 お菓子が左 お茶マナー」って覚えるか


そして、2つ以上のものを出す際には、奥からから順に出して、手前のものを飛び越えないようにするのもマナー


つまり、右から出すのであれば、先に奥(左)に置くお菓子を出し、次に手前(右)に置くお茶を出すということになります。


反対に、左から出す際は、先に奥(右)に置くお茶から出し、次に手前(左)に置くお菓子を出すことになります。


このような理由から、お茶とお菓子のどちらを先に出すかとは決まっていないのです。決めておくことができない、と言ったほうが的確かもしれませんね。

 右がお茶で左がお菓子
 手前のものを越えないように奥から先に出す

お茶が右、お菓子が左、マナー図解

茶碗の正面、茶托の正面


茶碗には正面がある場合が少なくありません。


一部に絵柄が付いている場合は、そこが正面になるので、相手に絵柄を向けて湯飲みを置きましょう。全体に均一に模様が入っていたり、柄がなかったりする茶碗はどの方向でも問題なし。


そして意外と盲点なのが、茶托にも向きがあるということ。知ってました?


へぇ~、茶托にも向きってあったんだぁ~、初耳だわ


もちろん模様のない茶托に向きはありませんが、木製の茶托の場合は木目がついています。このとき、木目が相手から見て横向きに見えるように置くのが、茶托の正しい置き方。縦になって木目の延長線上に相手がいるということのないように気をつけましょう。

茶托の向き、木目を横向きに、マナー図解

上座と下座


お茶を出す際、お客さんから先に出すのは当然のこと。おもてなしですから。


同席する自分の会社の社長が60歳くらいで、お客さんが若者でも、もちろんお客さんから出しましょう。


順番でややこしいのは、お客さんが1人ではなく複数名だったとき。いわゆる「誰に最初にお茶を出すか問題」です。


困るよねぇ、誰から出せばいいのかよくわからない時って……


お客さんが2人だった場合はまだ簡単です。特殊な部屋の造りでない限り奥が上座となる場合がほとんどなので、わかりやすい。


難問なのはお客さんが3人以上の場合。部屋の構造によって3人の座り方が異なってくることがあるんですね。


ずばり、奥から上位が座る場合と、中央に上位が座る場合との2通りがあり、相手がそれをどう判断して座ったのかがわからないという状況が発生するケースがあるのです。


こんなとき、もし相手の最上位人物が誰かを知っていたなら、座っている位置に関係なくその人物からお茶を出すのがベストと言えます。


もしわからなければ、中央からか奥からか、お客さんの雰囲気を瞬時に判断して臨機応変にいくか、部屋の構造上の上座から出しましょう。このあたりはもう現場のスキルを磨くしかありません。


あと、非常に大人数である場合や、極端にスペースがない場合などに、身内の人物やお客さんの中の誰かがお茶を回してくれることもありますので、そうした申し出があったら素直にお任せしてしまいましょう。


ただ、さも当然かのように、即座に「お願いします」というと、手伝うと申し出た人物もやや困惑を隠しきれないという気まずい状況になりかねないので、「すみません、ありがとうございます」くらいの雰囲気は出しておきましょうね。


絶対に自分で出さなければいけないと恐縮する必要はないので、そのあたりも含めて、やはり大切なのは臨機応変。

 上座や下座に関係なく、相手の最上位者からお茶を出す

まとめ


結局のところ、失礼なくスムーズにお茶を出せば、それに関してどうこう言ってくる人はまずいません。
なので、

  1. スムーズに
  2. さりげなく
  3. 礼節をわきまえて
  4. 臨機応変に


お茶が右、お菓子が左、といった最低限のマナーを覚え、上の4つを念頭におきつつお茶を出せばまず大丈夫です。自信をもってお茶出しに挑戦してみてください!