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お盆って何? 意外と知らないお盆にまつわるQ&A 七選

お盆,精霊流し

意外と知らないお盆にまつわるQ&A 七選

夏の行事といえば、お盆
盆棚を準備したり、実家に帰ったり、墓参りをしたり。
帰省ラッシュなどで高速道路が大渋滞する様子は「民族の一斉移動」とも比喩され、普段とは異なる場所で生活をされる方も少なくない。
懐かしさが蘇る時節だ。


しかしこのお盆、改めて「お盆って何?」と考えてみると、意外と知らないことも多いもの。
実際、私たち僧侶はお盆に関連する事柄で質問を受けることがけっこう多い。
なので今回はよく受ける代表的な質問とその回答をQ&A方式でご紹介したい


Q.1 そもそも、お盆って何?

A.1 先祖供養を目的とした仏教行事のこと。

お盆の間は、亡き人が縁者のもとに帰ってきて一緒に過ごすことのできる期間と考えられている。
先祖や親しかった亡き人とともに過ごし、感謝の心とともに供養を行うのがお盆である。

Q.2 お盆の起源は?

A.2 餓鬼道に堕ちた母を目連が救う説話が由来。

お盆は『盂蘭盆経(うらぼんきょう)』という経典にその由来が書かれている。
この『盂蘭盆経』には、ブッダの弟子の1人である目連(もくれん)餓鬼道に堕ちた母を救う説話が書かれているのだが、その内容は以下のようなものだ。


ある時、目連は亡くなった母がどのようにして暮らしているのかが気になり、神通力で死後の世界をのぞいてみた。
すると、てっきり天上世界にいると思っていた母は、なんと餓鬼道に堕ちて苦しみの日々を送っていた。
驚いた目連は何とかして母を餓鬼道から救いたいと考え、ブッダに相談した。
目連の話を聞いたブッダは、次のようにアドバイスをした。


「雨季の修行が終わる7月15日に、心身ともに疲弊している僧侶たちにご馳走を施してあげなさい。そうすれば多くの功徳が生まれ、その功徳でもって母は救われるだろう」
目連はこのブッダの言葉のとおりに僧侶に供養を施し、そして母は救われた。


この説話がもとになり、7月15日に先祖供養のために供物を供える行事、お盆が生まれたと考えられている。

Q.3 お盆の時期に各地で違いがあるのはなぜ?

A.3 旧暦から新暦に変化したため。
もともとお盆は旧暦の7月15日に行われていた。
しかし日本の暦が旧暦から新暦に移行したことで、お盆の時期にも違いがみられるようになり、現在では主に以下の3通りの時期が存在する。

  1. 7月に行うお盆
  2. 8月に行うお盆
  3. 旧暦の7月15日に行うお盆


7月にお盆を行うのは、「旧暦の7月15日にお盆が行われていた」という事実のなかから数字だけをそのまま取り出した結果である。
新暦の7月15日は旧暦の7月15日とは時期が異なるが、とりあえず数字を合わせるという面を重視した結果、こうなった。


8月にお盆を行うのは、旧暦の7月15日を新暦に換算すれば、8月中になる可能性が高いため
新暦7月15日のお盆よりかは旧暦の7月15日に近いため、8月盆は「旧盆」と呼ばれているが、このネーミングはちょっと問題ありと言わざるをえない。
8月盆とは別に、歴とした正統な旧盆が存在するからである。
それが3つ目の「旧暦の7月15日」に行うお盆。


旧暦の7月15日である日にお盆を行うということは、毎年異なった日付でお盆を行うということになる。
会社等の休暇の関係上、これは世間の主流にはなりえないだろうが、考え方としてはもっとも正統なお盆であるといえる。
ちなみにこの方式でお盆を行っている有名な地域は沖縄である。


旧暦やお盆の時期の謎については下の記事で詳しく書いたので、興味のある方はぜひどうぞ。
特に、旧暦の「閏月」の存在を知らない方は、目から鱗の発見があることと思う。
www.zen-essay.com


Q.4 「お盆」という言葉に意味はあるの?

A.4 3つの説がある。
1つ目は、インドの古い言葉であるサンスクリット語の「ウランバナ」が語源だとする説。
ウランバナとは「逆さ吊り」を意味する言葉で、目連の母親が餓鬼道で逆さ吊りにされて苦しんでいたことに関係するのではないかと考えられてきた。


従来はこのウランバナ説が主流であったが、現在は新たな説が有力視されている。
それが、イラン系の言語で「霊魂」を意味する「ウルバン」説である。
ウランバナは盂蘭盆と非常によく音が似ているが、ウルバンも語源として納得できるだけの音の近さはある。


3つ目の説は上記の2つとはまったく異なり、供物をのせる器のことを盆(ぼん)と呼んだからという説だ。
正確には、「盂」が供物や食べ物や飲み物をいれる器で、「蘭」がご飯を意味し、「盆」が水を入れる鉢を指すという説である。


Q.5 盆棚はどうやって準備すればいい?

A.5 参考までに下に一例を。
お盆,盆棚

伝統行事は各地域の特色が非常によくあらわれる性格を有しているため、地域によって形態に差が大きいため一例にすぎないが、上の画像のような形態がもっとも多く見られると思う。


まず、机や台の上に真菰(まこも)や白布を敷く。
そこへ仏壇から位牌を移してお祀りする。
供物に決まりはないが、盆棚に限らず仏教では五供(ごく)を基本とする。
五供とは、

  • 灯燭(とうしょく)
  • 浄水(じょうすい)
  • 飲食(おんじき)

つまり、「線香を供える香炉」「花を供える花器」「蝋燭(ろうそく)」「飲み物」「食べ物」の5つが基本となる。


お盆は夏の行事なので、素麺やスイカなどの季節の食べ物が供えられることも多い。
それから、「水の子」とよばれる、キュウリとナスを賽の目に切って洗米と混ぜたものを蓮や芋の葉の上にのせて供える風習も多く見られる。
細かく切る理由は、少しでも喉を通りやすく食べやすくするための心遣い。
盆棚の周囲には結界の意味をもたせるために青竹などが立てられることもあるが、これはあまり目にすることはない。

Q.6 キュウリとナスの供物は、何?

A.6 精霊馬(しょうりょうま)と呼ばれる、ご先祖様の乗り物。

お盆ならではの供物といえば精霊馬
先祖が縁者のもとへと帰ってくるのに、やっぱり徒歩では時間がかかるし疲れてしまうのではないか、ということで乗り物を用意したのが、キュウリとナスの見た目にも可愛らしいこの供物である。
キュウリは馬を模して作られ、早く先祖が家に到着する願いが込められている。
一方のナスは牛を模して作られ、牛歩のごとくゆっくりと名残惜しく去る意味合いを持たせている。


ただ、近年ではキュウリとナスの姿がとんでもない進化を遂げている。
下のサイトでは、そんな面白い精霊馬たちがたくさん登場する。
そもそも乗り物を意味して作られているのだから、車型や飛行型が登場してもおかしくはないのだが、進化の度合いが凄まじい。
馬よりも絶対速いのは間違いないだろうが……。実物を一度見てみたい。
matome.naver.jp

Q.7 玄関先などで火を焚くのはなぜ?

A.7 ご先祖様が帰ってくる場所の目印。

門口などで焚かれる火は迎え火とよばれる。
その名のとおり、先祖を迎えるために目印として焚かれる火である。
盆提灯が灯される理由も同じで、やはり目印の意味で灯される。
一般的には13日の夕刻に迎え火が焚かれ、15日の夕刻または16日の明け方や夕刻に先祖を送り出す送り火が焚かれる。
川に灯籠を流す精霊流しや、京都の大文字焼きも送り火である。