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永代供養墓とは? 知っておきたい意味やメリットや注意点

永代供養墓

画像引用元:佐藤石材工業


近年、新しいお墓を検討する際に「永代供養墓にしたい」と望む方が増えてきています。


先祖代々のお墓の維持管理は、家族や縁者によって行われることが多いですが、そうした墓守の役割をうまく承継し続けていくことがどうしても難しくなるときがあります


少子化や未婚率の増加といった事柄は家系の存続に直接的に影響を及ぼしますし、核家族化といった生活環境の変化も「先祖の墓離れ」に少なからず影響を及ぼしていることでしょう。


ほかにも……

  • お墓のことで家族に負担をかけたくない
  • お墓の承継者がいないわけではないが頼りたくない
  • 先祖の墓ではなく自分だけの墓がいい
  • 新しく墓を探しているが金銭的余裕がない
  • 立地なども含め納得のいく墓に入りたい


など、さまざまな理由から永代供養墓への需要が増加してきています。


基本的には「お墓の承継問題」を回避するために普及してきた永代供養墓ですが、需要増加の理由はそれだけではないようです。


そうした永代供養墓について、検討する上で最低限これだけは知っておいたほうが良いことをまとめましたので、新しいお墓の候補に永代供養墓を考えている方はぜひ参考にしてみてください。


お墓選びで後悔なんかしたくないもんねっ


永代供養墓とは何か

そもそも永代供養墓とは、寺院や霊園の運営者などが建立したお墓に納骨をし、お墓の管理や供養を寺院等へあらかじめ委託しておくことを目的としたお墓のことです。


永代供養墓を選択する最大の理由は、お墓を継いでくれる人がいなくても大丈夫な点にあり、「お墓の承継問題」を回避する方法として最適な形態であるといえます。


掃除などのお墓の維持管理は寺院や霊園管理者がおこなうので安心ですし、供養もおこなってもらえます。


個別に一周忌や三回忌といった法事を執りおこなう場合は、永代供養とは異なる範疇の供養となる場合が少なくないですが、法事を執りおこなうこと自体はもちろん可能


永代供養墓はお参りに訪れる方が不特定多数になる可能性も考慮され、正面の参拝スペースが広く設けられていたり、花立てや塔婆建てなどが大きめに備え付けられていたりもします。


また、納骨された方の名前や戒名は、永代供養墓の側面や、別に設けられた墓誌に刻字されることが多いです。


お墓を継いでくれる人がいなくても安心して入れるのが永代供養墓ということだな

永代供養墓の種類

永代供養墓と合祀墓を同じものと考えている方もいるかもしれませんが、現在の永代供養墓には大きく分けて3つの種類があります。

①合祀墓

まず1つ目は、合祀墓


合祀墓とは「合わせて祀る墓」という言葉どおり、1つの穴に大勢の方の遺骨を一緒に埋葬する方法になります。合祀墓のほかに合葬墓と呼ばれることもあります。


永代供養墓の下に大きな穴が掘られており、そこへ遺骨を埋葬する方法が一般的です。


もっともポピュラーな永代供養墓の形態である合祀墓ですが、1つだけ注意しておきたいことがあります。


それは、何らかの理由であとから特定の方の遺骨だけを取り出したいということになっても、合祀墓の場合は基本的に不可能だということ。


たとえば家族がお墓を別の場所に移したいと思って遺骨を取り出したいと考えても、合祀墓は何人もの方の遺骨を一緒に埋葬しているので分離して遺骨を取り出すことはできません。

②納骨堂

2つ目は、納骨堂タイプの永代供養墓


これは合祀墓のように1つの穴に遺骨を埋葬するのではなく、骨壺などの容器に遺骨を入れたまま、骨壺ごと安置していく方法の永代供養墓になります。


永代供養墓の地上部分に骨壺を納骨できる小さな部屋がいくつも作られており、そこへ納骨をするタイプのものもあれば、建物の中に納骨堂を作り、そこに安置するといったタイプもあります。


このような方法ですと、仮に後から故人の遺骨を取り出したいということになった場合、取り出すことが可能となります。

③個別墓

3つ目は、個別墓タイプの永代供養墓


個別墓タイプというのは、通常のお墓のように地面の上に1つのお墓が建っており、そこへ埋葬するというもの。


一見すると普通のお墓と変わらないように見えるかもしれませんが、管理や供養は永代供養として寺院等に委託されているので、見た目だけ個人の墓というタイプになります。


合祀墓のように、知らない人と一緒のお墓に入るのは嫌だという方には一定のニーズがあるとのこと。ただし、金額的には個別墓タイプのほうが高く、合祀墓のほうが安いという傾向にあります。


ふむふむ、合祀墓だけじゃなくて、納骨堂タイプや個別墓タイプという個別対応してくれるケースもあるのね


「永代」が意味するもの

永代供養墓は「永代」と冠されているため、「永遠に供養してもらえるお墓」と認識されることがありますが、これは寺院や霊園によってかなり解釈が異なるので注意が必要です。


文字どおり「管理者がいる限り永遠に供養を続ける」という、まさに永代にわたる供養としての永代供養を標榜しているところもあるにはありますが、どちらかというとそれは少数派。


多いのは、37回忌や50回忌といった、いわゆる「弔い上げ」と呼ばれる区切りをもって「永代」の終わりと考えているケースです。

弔い上げ後はどうなるの?

こうした「弔い上げ」によって永代供養が終わった場合でも、合祀墓に埋葬された方であればあまり影響はないといえるかもしれません。


永代供養墓自体は当然のことながら変わらずに残り続け、永代供養墓の管理も変わらずに続くからです。


ただし、供養の際に戒名(または俗名)の読み上げがされなくなるといった影響は起こる可能性があります。


一方で、「弔い上げ」によって永代供養が終了した場合、納骨堂タイプと個別墓タイプの永代供養墓を選択していた方には大きな変化が起こりえます。


ほとんどの場合、期間が過ぎれば遺骨は合祀墓に埋葬されるため、納骨堂タイプと個別墓タイプのお墓に納骨していた方々の遺骨は合祀墓に埋葬され、それまで使用していた納骨堂の部屋や個別のお墓が使用できなくなるのです。


「永代」という文字があっても永遠ではなく期限があるということが実際によくありますので、このあたりのことはよく管理者に確認をしておかないと後々になってトラブルに発展しかねません。注意しておきましょう。


「永代」って書いてあったら「この先ずっと」だと思うでしょ……

「墓」と「塔」と「霊廟」の意味

永代供養墓という表記のほかに、「永代供養塔」といった表記や、「永代供養霊廟」といった表記がなされているものもあります。


こうした「墓」「塔」「霊廟」といった表記で何か違いが生じるのかと疑問に思われることがあるかもしれませんが、これらはすべて同じ「墓」の意味ですので主立った違いはありません


仏教におけるお墓は、インドにおいてはストゥーパと呼ばれていました。


ストゥーパを日本語に訳すと「仏塔」「舎利塔」「供養塔」などとなり、したがって仏教ではお墓のことを塔とも呼び習わすことがあります


つまり、永代供養塔と表記したときの「塔」は「墓」と同義の言葉であるということです。


また、霊廟は死者の魂を祀る場所という意味であり、要するにこれもお墓のことです。


ストゥーパについて詳しく知りたい方は下の記事をどうぞ。お墓に建てる卒塔婆との意外な関係も書いてあります。
www.zen-essay.com

「永代使用料」はまったく別物

「墓」「塔」「霊廟」は同じ意味の言葉として理解して大丈夫ですが、「永代使用料」はまったく意味の異なるものですので永代供養と同じとは考えないでください。


お寺や霊園などで「永代使用料」とあれば、これはほぼ間違いなく墓地の区画の使用料のことです。


墓地の区画(土地)は購入して自分が所有する土地になるわけではなく、あくまでも借りる(使用する)だけであり、その使用料が永代使用料です。


永代供養墓と同じく「永代」と表記されているので混同してしまうことがあるかもしれませんが、永代使用料は墓地の土地を使用する権利の購入に関する料金のことですので、永代供養墓とは異なるものになります。


「永代使用料」と「永代供養」を混同してはいかんぞー


永代供養墓のメリット

なぜ永代供養墓の需要が増加しているのかという話と重なる部分もありますが、お墓選びをする場合、永代供養墓にした場合のメリットとして以下の事柄が挙げられます。

  • 無縁墓になる心配がない
  • 承継者を必要としない
  • 一般的なお墓と比べて費用が安い
  • 個人単位で申し込みが可能
  • 寺院の檀家にならなくても可能
  • 宗教や宗派を問わない場合が多い


もちろん永代供養墓の管理者ごとに詳細は異なりますが、概ね以上のような共通点が永代供養墓にはみられます。


やはりキーワードとなるのは「承継問題」「費用」「個人」といったところでしょうか。


こうした面からお墓を考える人には、永代供養墓はニーズに合ったお墓といえるでしょう。


置かれた状況は人それぞれだから、「先祖代々のお墓」ではカバーできないケースが出てきて当然よね

永代供養墓を選ぶ際の注意点

実際に永代供養墓を選ぶことになり、現地を見学するようなことになった際には、必ず以下のことを管理者に確認しておきましょう。


これまでにも述べてはきましたが、永代供養墓の管理・供養の在り方は永代供養墓ごと(管理者ごと)によってだいぶ異なります


わからないことや不明なことがあれば、購入を決める前に必ず確認するようにしましょう。

料金について

永代供養墓の料金として記載されている金額のほかに、別途かかる費用が存在するケースがあります


たとえば、納骨の際の法要料とか、墓誌に名前を刻字する料金とか。年間管理費がかかるケースはまずないとは思うものの、一応は確認しておいたほうがいいでしょう。

納骨方法

前述の納骨の方法にもあるように、その永代供養墓の納骨の方法が「合祀」なのか「納骨堂」なのか「個別墓」なのか、自由に選べるのか、選べないのか、このあたりの確認も欠かせません。


また、納骨堂タイプだったり個別墓タイプだったりした場合、いずれは合祀となるのか、また合祀になるのだとしたらその期間は何年なのか、そういったことも確認しておいたほうがいいでしょう。


これは「永代」が永遠なのか、何回忌までなのかとも関係することですので、必ず確認しておいたほうがいいです。

法要の詳細

永代供養墓に納骨をした場合、その供養法要は合同でおこなわれる場合が多いです。


個別に命日ごとにお経を読むのではなく、お盆やお彼岸といったあらかじめ決められた日時に納骨者全員を供養するといった方法です。


その場合、供養の日時がいつに決められているかを確認し、伝えるべき人がいる場合にはしっかりと伝えておく必要があります。


個別に回忌法要等をおこなう場合、可能ではあるものの別途お布施が必要という場合が多いので、その確認もしておきましょう。

宗教・宗派の許容

永代供養墓では宗教・宗派を問わないとするケースが多くみられます。


ただし、これも絶対に不問というわけでもありませんので、確認は必要です。

その他

管理者ごとで異なるものが少なくないのが永代供養墓ですので、ちょっとでも不明に感じることは必ず確認しておきましょう


自分の死後を納得のいく形にしておきたいという、いわば安心を求めて永代供養墓を選択するわけですから、不明点があっては安心できません。


また、説明を求めて面倒くさがるような管理者なら、もうその段階で候補から外したほうがいいでしょう。


安心して任せられる管理者に自分の死後を任せるためにも、わからないことはすべて確認してすっきりとした気持ちになることをおすすめします。


ケース・バイ・ケースなことが多くて、訊かないとわからないことばっかりだから、必ず確認するんだよー!

永代供養墓の探し方

永代供養墓は日本全国にあり、今ではネットから多くの情報を得ることができます。


たとえば下の「お墓さがし」というサイトは全国のお墓の情報を簡単に得ることが可能ですので、興味のある方はこういったサイトを通じて一度調べてみてはいかがでしょうか。
ohaka-sagashi.net