禅の視点 - life -

禅語の意味、経典の現代語訳、仏教や曹洞宗、葬儀や坐禅などの解説

後悔と馬鹿

人前で何かを話し終えて、少し時間が経った頃に、ああ、あの事を話し損ねた、あの事を忘れていた、と悔しく思い返すことがある。そんな時は往々にして、損ね忘れていた話を織り交ぜて一から話をなぞってしまう。慰めるように、誰にともなく、独り言のように…

【禅語】直心是道場 ~心によって道場が現れる~

【禅語】直心是道場 直心是道場(じきしんこれどうじょう)という禅語を目にすると、なんとなく思いだしてしまうのが、ノートルダム清心学園理事長を務めておられた故・渡辺和子さんの著書『置かれた場所で咲きなさい』。この「置かれた場所で咲く」という言…

便利な社会になっても幸せになるとは限らない理由

たとえばこんな質問を投げ掛けられたら、あなたはどう答えるだろうか。 「年間に死者が3000人ほど発生する機械があります。その機械は個人と社会の在り方を極めて便利で効率的なものへと変えます。しかし、それには3000人という人命犠牲が伴います。この機械…

石徳五訓とは? 原文と意味について

石徳五訓とは 石徳五訓せきとく ごくんとは、永平寺第73世 貫首(住職)熊澤泰禅くまざわたいぜん禅師(僧侶としての正式な名前は祖學そがく泰禅)が残した、石の徳を5つ列挙して説示した言葉のことである。石の徳は仏の徳に通じ、石の徳を具える者は仏であ…

戒名の読み方がわからない? 漢音と呉音と、レアな唐音(宋音)の話

漢音と呉音と、レアな唐音(宋音)の話 「人間」と「時間」の「間」の文字は、なんで同じ漢字なのに読み方が「ゲン」と「カン」で違うんだー、ややこしいな、クッソー! と、小学校の漢字テストで苦戦を強いられている小学生の皆さま、お気張りやす、としか…

「五色幕」「仏旗」「六金色旗」の意味 ~仏教の色に関する面白い話~

「五色幕」「仏旗」「六金色旗」とは何なのか? お寺に五色の幕が掛けられているのを見たことがありますか? これは「五色幕(ごしきまく)」と呼ばれるもので、そこが仏教の寺院であることを示す、言わば「仏教の幕」みたいなものです。下の画像に映ってい…

異常だって正常さ ~色覚異常の目で普通に生きていく~

私は生まれつきの先天性色覚異常という目の障害があって、赤と緑に関連する色の識別が難しい。識別できる場合もあるのだが、たとえば緑色の草のなかに赤色の花が混じっていても全部緑色に見えることが多いし、熱っぽい顔だとか、生焼けの肉だとか、そういっ…

ブッダの出家の契機を綴った「四門出遊」の話が極めて重要な理由

ブッダの出家の契機を綴った「四門出遊」の話が極めて重要な理由 ご存じでしょうか。仏教の創始者であるブッダは、出家する以前、シャカ族という一族の王子であったことを……。 「ブッダ」と言うと清貧なイメージがあるかもしれませんが、もともとの身分はい…

無縁墓は「縁の無くなった墓」とは限らない 

仏教における「無縁」の話 「無縁」という単語をくっつけた言葉をたまに見聞きする。良い意味で使われているケースは、まずない。 パッと思いつくところでは、「無縁墓」「無縁社会」「無縁死」。どれも言葉の後ろにひっそりと静まりかえったような淵を感じ…

ブロアー革命とパラダイムシフト

ブロアー革命とパラダイムシフト はっきり言って皆様にとってはどうでもいい話なのだが、ブロアーを買おうかどうか、ずっと前から迷っている。 ブロアーとはもちろん、冒頭の画像のように、屋外で使用する掃除機械のブロアーのことだ。強烈な風を吹き出して…

残飯と粥 ~永平寺の朝食の「普通」~

残飯と粥 ~永平寺の朝食の「普通」~ 食べ物の扱いに対する感覚は、人によって随分と異なる。対極の例を挙げれば、食べ物を大切に扱う人と、大切に扱わない人の違いということになるだろうか。 なぜ人によってそれほどまでに異なるのか不思議に思うこともあ…

檀家とは? ~檀家制度、菩提寺、檀信徒の意味や問題点など~

檀家ってなに? すべては寺請制度からはじまった 経済的安定と宗教的堕落 菩提寺とは? 檀家 = ダーナパティ = 施主 「檀家」よりも「檀信徒」を推奨 「信教の自由」と檀家制度 憲法20条 信教の自由 関わり合いの濃度 檀徒とは? 信徒とは? じつは信徒の…

ブッダが最初に説法した意外な相手 ~五比丘より先にブッダの教えを聞いたウパカ~

ブッダが最初に説法した意外な相手 ブッダが悟りを開いたあと最初に説法をした相手は、かつて苦行をともにした5人の修行仲間だった、というのが仏教の常識です。この最初の説法は「初転法輪(しょてんぽうりん)」と呼ばれ、ブッダ史における重要な出来事の1…

垂直思考と水平思考 ~4つのリンゴを3人で分けるには~

金沢嘉一氏とリンゴのエピソード 教育評論家として知られる金沢嘉一氏が小学校の校長を務めていたとき、こんな出来事があったそうです。 ある日、若い先生が算数の時間の冒頭に、生徒に対して次のような問題を出しました。 「リンゴが4つあります。3人で平等…

一寸坐れば一寸の仏 ~真似でいいのだ~

「学ぶ」という言葉の語源は「真似ぶ」だという。考えてもみれば、私たちが生まれてきてからこのかた学んできた事柄というのは、その多くが先人の知恵の習得、つまりは先人の真似である。 食事、遊び、技術、文化。日常生活のあらゆる事柄を想像してみて、そ…

「人生は一度きり」は罪な言葉だ

「人生は一度きり」なのは、なぜなのか。それは、自分が死ぬから。人生が一度きりだから自分が死ぬのではなく、自分が死ぬから人生は一度きりなんです。すると、「人生は一度きり」ということを理解するには、それ以前に自分が死ぬ存在であることを理解して…

四聖句とは? 達磨大師が残した禅の教え

四聖句というのは、禅をインドから中国に伝えた達磨大師(だるまだいし)が残したと伝えられている言葉なんですが、禅の特徴を端的に示した名句ということで、ただの四句ではなく四聖句と呼ばれています。 四聖句以前に「そもそも禅がわからない」という方も…

永代供養墓とは? 知っておきたい意味やメリットや注意点

新しいお墓を検討する際に「永代供養墓にしたい」と望む方が増えてきています。 先祖代々のお墓の維持管理は、家族や縁者によって行われることが多いですが、そうした墓守の役割をうまく承継し続けていくことがどうしても難しくなるときがある。 少子化や未…

「仏教 × SDGs」に対する一抹の違和感

「仏教 × SDGs」に対する一抹の違和感 このところ、SDGsと仏教を掛け合わせた発言を見聞きすることが多くなりました。「持続可能で豊かな人類社会のために仏教界も協力をしていこう」と。 SDGsが登場する前からこうした流れはありましたが、SDGsの登場によっ…

砂遊びの喩え ~執着がなければ苦悩は生じない~

砂遊びの喩え ~執着がなければ苦悩は生じない~ 仏教、つまりはブッダの教えというものは、ブッダ自身の「苦悩」から始まり、苦悩からの脱却を経て、同じように苦悩する人々へ、いかにして救いの道を説くかという段階に至って「仏教」となりました。自分が…

人生はビールのようなもの 

人生はビールのようなもの 二十歳そこそこの頃に飲んだビールの味というのは、決して「美味しい」といったものではありませんでした。苦いとしか思えず、どちらかと言えば「不味い」に分類されるもの。多少無理して飲んでみても、酔っ払うというよりは気持ち…

生前戒名に関する誤解【生前戒名希望者必読】

生前戒名に関する誤解 先日、知り合いのお寺へちょっと手伝いに行ってきましてね。檀家さん数名に生前戒名の授与をおこなうから式の手伝いをしてくれないか、との用件でした。お彼岸の最中でしたけど、ちょうど時間のとれる日でしたので伺いました。やっぱり…

【禅語】愚の如く魯の如し ~愚直という偉大な生き方~

愚の如く魯の如し ~愚直という偉大な生き方~ 「偉大な大工は、誰も見ないからといって、キャビネットの裏側にひどい木材を使ったりはしない」 これ、スティーブ・ジョブズの言葉なんですってね。誰からも見られないところや目立たないところだから、手を抜…

永平寺の雲水になるための関門「旦過寮」

永平寺の雲水になるための関門「旦過寮」 山門の話を読んでいない方は、まずはこちらをどうぞ。www.zen-essay.com 永平寺への入門が許されると、新米雲水は山門をくぐって永平寺の内側へと足を踏み入れます。ようやく、といった安堵の気持ちが湧きますが、と…

永平寺への入門

永平寺への入門 私が永平寺で修行をしたのは、もう10年以上も前のこと。曹洞宗には本山が2つあって、福井県の永平寺と横浜にある總持寺なんですけど、どちらも本山なんですね。我々は「両本山りょうほんざん」って呼んでます。ちなみに言っておきますけど、…

『大法輪』と私

『大法輪』と私 本屋の雑誌コーナーから仏教総合雑誌『大法輪』がなくなっていることを、寂しく思った。 6月発売の7月号をもって休刊。 もうじき9月となる今、白い表紙に明朝体レタリングで「大法輪」と揮毫された、あのお馴染みの表紙を見ることはもうない…

僧侶はサラリーマン。寺院収入は免税。その意味。

僧侶はサラリーマン(給料生活者)なのだが、その事実はほとんど世間に知られていない。たまに「坊さんは非課税だからいいよなぁ」というような話がされることがあるが、非課税なのは宗教法人である寺院の収入に対してであって、僧侶の収入に対してではない…

不幸なわけじゃない

不幸なわけじゃない 何歳で亡くなったって、不幸なわけじゃない。 若くして亡くなる。年老いて亡くなる。 どちらもその人の一生涯である。 他人の人生と比べてどうこう言うことじゃない。 自分の生涯は1つしかないのだから、生きた軌跡のほかに、その人の生…

菩提心と自己犠牲とアンパンマン

菩提心と自己犠牲とアンパンマン アンパンマンという国民的なアニメを、もちろん皆さんご存じのことと思う。 私も子どもの頃によく見たことを覚えている。 大人になってからはさすがに久しく見ていなかったが、子どもが生まれてからは何度も一緒に見た。 映…

年寄りの気持ちがわかるのは……

年寄りの気持ちがわかるのは…… お盆の時期には檀家さんの家々を廻り、各家の先祖を供養するために経を唱える。いわゆる棚経とよばれる行事を毎年行っている。 精霊棚(盆棚)とよばれるお盆限定の棚をこしらえて、仏壇のなかから位牌等を取り出し、棚の上に…